思い描いたことが目の前に現れないときは、苦しいかもしれません。
たとえば、技術職として「やりたいこと」ができると思って入った会社で、顧客対応の業務が割り当てられ、窓口対応やクレーム処理、、、
たとえば、やりたいことを仕事に!と始めたものの、「やりたいこと」だけでは月に10万円の収入すら得られない、、、
そして「こんなはずじゃなかった、、、」「なんのために今の仕事を選んだのか」「ほんとうは『やりたいこと』ではなかったのか、、、」などと後悔の念に駆られることがあるとは、ときどき耳にすることです。
しかもそんなときに限って目につく言葉が
「こんんはずじゃなかった、と思うなら辞めればいいじゃないか」
「やりたいことを自ら臨んで選んだのだから、後悔するほうがおかしい」
「やりたいことをする覚悟ができていないからだ」
だったら、なんともやるせなくなります。
けれども、当の本人も十分に分かっているのです。
「こんんはずじゃなかった、と思うなら辞めればいいじゃないか」たしかに、そうなのです。
でも辞められないのです。ただ、弱音を吐きたくなるだけなのです。
自分が思いつく限りのことをやってみたけれど、それでも思うような現実が現れずに、なんとか頑張ろうとしてもそれ以上うまくやるためのアイデアが出て来なくなってしまって、、、
どうすればいいのかパニックになって、ムダなことのやりすぎ、努力が足りない、そんなものは努力じゃない、、、そんな言葉ばかりが耳に入るのです。しんどいのです。私が弱いすぎるのでしょうか?弱音を吐いてはだめですか?
ほんのすこしだけ、ちょっとだけでも、優しい言葉が欲しくなってしまうことを「悪いこと」と思い、自分を責めて辛くなる。
そうして殻に閉じこもってしまうことだけは、絶対に避けてほしいと思うのです。
もし「今」にやりきれない気持ちを抱き、「未来」を少しでも疑ってしまうことがあるならば、手に取ってほしい本があります。
「たいへんだったね。これからどうしたらいいか、私も一緒に考えよう」
これは、そういう本です。
「OPTION B ―逆境、レジリエンス、そして喜び」シェリル・サンドバーグ、アダム・グラント著
著者は、Facebookの最高執行責任者(COO)。グーグルのオンライン・セールス担当副社長や米財務省主席補佐官を歴任したキャリアの持ち主です。前著である「LEAN IN」は女性リーダーのロールモデルとして話題になり、世界的なベストセラーとなりました。
しかしその後、最愛の夫を亡くした彼女。大切なものの喪失による深い失意の経験や、そのなかから得たものを綴っているのが、この本です。
著者は回顧しています。
「『LEAN IN』を書いたとき、パートナーのいない女性が直面する困難について、十分に書いていない、とのお叱りを受けた。そのとおりである。私にはわかっていなかった。家庭のことでいっぱいいっぱいになっているときに、仕事で成功するのがどんなに大変なことなのか、わかっていなかった」と。もし前著を読んでいるならば、著者の得たものが捉えやすいかもしれません。
またこの本は、アダム・グラントとの共著です。彼女が逆境から立ち上がる支えとなった友人のひとり、心理学者であるアダム・グラットンが彼女に行ったアドバイスを軸に、「レジリエンス」を育む具体的なヒントも語られています。
この本を一言でいうならば、「どんな苦難な状況に立たされたとしても、人は喜びある人生を送ることができる」ということが書かれているといっても過言ではありません。
たとえ今の苦難が「過去の過ち」から引き起こしたものであったとしても、自分自身に思いやりを持つことで、それができるともいいます。
著者以外に、大切な人の死に直面した人、レイプや人種差別、事故や過去の過ち、などで「困難な状況」に遭った人が、その出来事とどうやって向き合ったのか?という体験的なお話も綴られています。
そこでは、「困難な状況」は人によって様々であっても、苦難からの立ち直りを妨げる
・自責化:この「最悪」のできごとは自分のせいだ
・普遍化:なにもかもが「最悪」だ
・永続化:この先ずっと「最悪」だ
への対処がキーポイントだということを知ります。
そして、これらに対処する方法として、アダムのアドバイスに沿ってシェリルが試みた具体的な方法が描かれているわけです。
もし読み手がなにかを取り入れたいと思えば、すぐにでも取り組めるものばかりです。
著者はいいます。
「完璧な人生なんてあり得ない。だからみんな、なんらかのかたちの「オプションB」を選ばざるを得ない。この本は、だれもがオプションBをとことん使い倒せるようにするための本である」と。
巷に溢れる「ポジティブな力強いメッセージ」の言葉を受けて、後悔や自責の念に駆られることを、「ないこと」にしないで欲しいと思うのです。
言葉は、タイミングによって爆弾にもなれば栄養にもなるものです。そういうものだ、ということを、この本を通して感じてください。
そして、「たいへんだったね。これからどうしたらいいか、私も一緒に考えよう」と、自分にも誰かにもいえるきっかけになればと、思います。
「逆境を経たひとりの女性」が書いた本として、手に取ってみてください。
そして、もしあなたの何かに触れるものがあったなら、誰かに伝えてみてください。
こんな本があるよ、と。
※読書後、もしよければあなたの感想もお聞かせください。読活交換いたしましょう。
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